新潟日報 掲載

“新潟日報 日報抄 Genzuba 紹介”

2008.4.21 日報抄より抜粋

屋根裏部屋にはどこか人を引き寄せる力がある。
江戸川乱歩の「屋根裏の散歩者」ほど猟奇的ではなくとも、西洋の物語ではよく、宝物が隠されていたり、子供が異界へと旅立つ抜け道であったりする。
新潟市の下町で、魅力的な屋根裏部屋と出合った。かつては港町として栄え、いくつもの造船所が信濃川沿いに並んだ柳島町
だが、いまはそのにぎわいもなく、造船所の多くは工場などに転用されている。
そのうちの一つに入り、狭く長い鉄の階段を上がりきった。フローリングの床が現れた。
視界を遮らない程度の仕切りの間に書架や、しゃれた家具が並ぶ。
建物の無骨な外観からは想像できない、広々としたブティックのような空間だ。
この辺りの造船所では、原寸大の設計図を作り、それに合わせて鉄板を加工していた。だから、屋根裏部屋には必ず「原図場」と呼ばれる、階下の作業場と同じ広さの部屋があったコンピュータ設計の登場でこの空間は無用になった。
ここをオフィスに改装した新潟市の若い建築家、東海林健さんは、新潟の原点である港町の精神を引き継ぎ、水辺に拠点を置きたいと思い、ここにたどり着いた。
いま、そこは単なるオフィスではなく、街づくりやアートに感心を持つ人が集まる交流のスペースにもなろうとしている。
役目を終えた空間に吹き込まれた新しい命。この屋根裏も宝物を秘めた異界への入り口なのかもしれない。
小さな窓から見下ろす港に貨物船が浮かぶ。
いつもより水面が広々しているように見えた 。

PageTop